岡山フィルムプロジェクト上映祭 オフィシャルレポート

 

「岡山フィルムプロジェクト」は、岡山県の地域活性化と次世代クリエイターの育成を目的に立ち上げられた映画制作プロジェクト。これまで映画を通じて地域と若い世代をつなぎ、岡山から新しい才能と物語を生み出してきた。本イベントはその集大成として、映画・教育・企業・地域が連携して生み出した成果を報告する機会となった。

まず冒頭に岡山フィルムプロジェクト会長 若林昭吾さんより挨拶があり「映画作りというのは映画が出来上がるだけではなく副産物がある。今回、短編映画2本、長編映画1本を制作しましたが、映画をつくるだけではなく、たくさんの若者が映画を作りたいと思える環境を作り出すことができました。映画作りは地域作り、人作りと繋がっていることを実感できました。絶えず若者たちが持続可能な映画作りを目指せる土壌をつくることができたと思います。これからも、そういう希望がある岡山にしたいと思っています!」と力強い挨拶があり会場からは拍手が送られた。

続けて岡山県知事 伊原木隆太さん挨拶にて「岡山は晴れが多いことから、晴れの国のハリウッドとして「晴れウッド」を掲げてきました。晴れが多いので映画のロケをしやすいのではと、10年かけてロケ地誘致に力をいれてきました。23年にはロケーションジャパン大賞を受賞することができました。これから映画を通じて、更に岡山を盛り上げていきたいと思っています。」と観客に熱く語りかけた。

衆議院議員 山下貴司 衆議院内閣委員長(クールジャパン戦略、知的財産戦略 等 担当)/自民党知的財産戦略調査会長からは「いま日本のコンテンツは基幹産業となっています。コンテンツ産業の海外売り上げは年間5.8兆円と鉄鋼産業よりも多く、全体の規模では15兆円と農林水産業よりも多い。そんな日本のクリエイターをもっと育てたいと強く思っています。また映画「三丁目の夕日」「国宝」、連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」は岡山県で撮影されています。フィルムを通じて映画を海外へ届けていきたいと思っています。このプロジェクトに心より感謝し、応援しています」と本プロジェクトへのエールを送った。

協賛企業である両備ホールディングス株式会社 代表取締役上席執行役員COO 兼 グループCOO 三宅健夫さんより「ものを発信する際、パワポから動画に代わってきていると実感します。弊社には動画制作チームがあるのですが、このプロジェクトに参加して非常に感銘を受けていました。また同じく参加された学生や関わった方々が刺激を受け、岡山が映像の発信地になることを願っています」と挨拶があった。

続けて株式会社シン・コーポレーション 取締役 (営業本部長・新規事業推進部長)吉田忠道さんより「弊社が参加した理由は企業版ふるさと納税の制度やクリエイターの発掘育成といった理念に感銘を受けたためです。地域密着型でこれからも未来ある学生や若者を育てたいと思っています。映画は生活を豊かにするものという認識のもと応援しております」と語った。

またシリーズ8本目となる、『MIRRORLIAR FILMS Season8』の監督陣舞台挨拶があった岡山県で撮影された、MEGUMIプロデュース・佐渡恵理監督『The Breath of the Blue Whale』、数多くの公募作品から選出された節田朋一郎監督『愛骨』、廣田耕平監督『ラの♯に恋をして』、安藤春監督『CUT!』の3名とプロデューサーである阿部進之介と山田孝之が登壇した。

まず本プロジェクトの趣旨を問われた阿部は「MIRRORLIAR FILMS」というのは、映画を撮ったことがない人たちに映画を撮る機会を与え、映画の関係人口を増やすことを目的としています。だれでも映画をつくれることを目標に、これまで8シーズン制作してきました。シーズン5からは各地域とタッグを組んで学生や若者たちとその地域で映画を撮影しています。日本全国で映画の種まきをしているような感覚です。」と語り、同じくプロデューサーである山田は「今回撮影された2本をぜひ岡山が地元の方に見ていただきたいです。岡山の素敵な景色をみていただき、改めて地元の美しさに気付くこともあるのではと思っています」と松田美由紀監督作品、佐渡恵理監督作品が映し出した映像美に注目してほしい旨を語った。

MEGUMIプロデュース、佐渡恵理監督作品「The Breath of the Blue Whale」について改めて作品テーマを聞かれた佐渡監督は「本作は近未来の日本を舞台に、セリフがないものを作りたいと思い制作しました」と語り、MEGUMIも「MIRRORLIAR FILMSさんにお声がけいただき、なんでも好きなものを作っていいよと言っていただけた。これまでにないチャンスをいただき、しかも私が育った岡山で撮影出来るという機会に本当に感動し、プロジェクトの意義に感銘を受けました。佐渡恵理監督はこれまで見てきた監督の中でもトップレベルにこだわりが強く、破壊と創造を繰り返し、納品のその日までこだわり抜いてくださった。本当に素晴らしい監督です」と佐渡を絶賛。それを受けた佐渡監督も「MEGUMIさんとのセッションで作品に肉付けをしていきました。自分ひとりではできなかったし、コラボできたからこその貴重な体験でした」と本作の制作過程に喜びを語った。

数多くの公募作品から選出された、「愛骨」を監督した節田監督は本作に対して「骨が好きな先生と、その先生を好きな同僚の先生のすれ違いを描いたラブストーリーです。不器用な愛くるしさがある作品です」と魅力を語った。

また本シーズン8ではカンヌ国際映画祭で買い付けた「ALI」が収録されている。購入に至るまでの経緯を問われると阿部は「2024年に山田がカンヌ国際映画祭に行き、来年は買い付けをしたいと言いました。有言実行で、今年は短編映画の買い付けをカンヌ国際映画祭の地で実施することができました」と語り、MEGUMI主催のJAPAN NIGHTでの交流がきっかけだったことを明かした。MEGUMIは「イベントにお越しいただき嬉しい限りです。日本のクリエイターや文化を海外に発信することをテーマに約1500人の来場がありました。世界の方々は日本の文化が好きですし、コラボレーションなどの声も多々いただきます。そのチャンスをつかみたいと思っています。」と今年の映画祭を振り返った。

最後に、地元岡山でこれから活躍する学生や若者に向けて一言と問われると阿部は「今回はじめて映画に携わった方も多いと思います。その時のワクワクを忘れないでほしい、楽しいことに引っ張られるような感覚を今後も指針にしてくれたら嬉しいです。もし、映画の世界に興味を持った方々は、いつか現場で会いたいなと思います。」と語り、MEGUMIは「映画のロケってとても大変なので知事をはじめ、岡山の方々が受け入れてくれることがとても嬉しいですし、今日それを知れたことが嬉しいです。映画を通して人生を豊かに、そして映画を通じて海外に日本を伝えていきたい。」と意気込みを語った。学生に向けてと問われ山田は「なんでもやってみてほしいです。やってみたいの言い訳を考えてしまいがちですが、まずは実行してみる。そうすると仲間が増えて、いずれ壁にぶち当たる。その壁が出来たら一緒に考える。それまではとにかくやってみてほしいです。映画じゃなくてもいいから挑戦を続けてほしい」と学生にあたたかいエールを送った。

続けて、本プロジェクトに学生リーダーとして参加した古本寛奈さんが登壇。「これまでの活動で一番印象に残っているのは、グッズ・プロモーション部会のサポートとして、様々な企業の皆様との打合せに参加させていただいたこと。普段は消費者としてしか関われない方々と直接お話しし、私たち学生の考えを形にしようと懸命に動いてくださっている姿を間近で拝見できたことは、本当に貴重な経験だったと今でも感じています。この活動を通じて、商品開発やイベントのプロモーションがどのように進められているのか学ぶことができ、さらにこんな仕事にも関わってみたいと進路の幅を広げるきっかけにもなりました。」とこれまでの1年間の学びを振り返った。同じくプロジェクトに関わってきた学生たちが続けて開発した商品をPRした。

「オカヤマグミ」の開発をした山形陽奈さんは「株式会社果実工房さまと共に、岡山ならではのグミを作らせていただきました。果物王国・岡山を代表する清水白桃とマスカット・オブ・アレキサンドリアの果汁を贅沢に使った2種類の味のグミの詰め合わせです。グミは学生の間でも大変人気なのですが、お土産ものとして素敵なものがあれば良いなと思い企画しました。」と語り、実際に出来上がったグミをお披露目した。

続いて「倉敷ほろ酔い彩り包み」を開発した岡田菜花さんは「倉敷市の菊池酒造さまを代表する日本酒、純米大吟醸「燦然」と、海幸山幸本舗の手づくりおつまみをセットにしました。メンバーの1人がご両親にお酒をお土産で買って帰ったときに喜ばれた経験から、この企画が生まれました。」とPR、オカヤマグミと合わせてパッケージデザインは、倉敷芸術科学大学 芸術学科の西田幸司先生の協力であること語った。

「AFTERNOON TEA BOX」というアフタヌーンティーセットを開発した吉田奈那さんは「岡山県内で3店舗展開する、「カフェ青山」さまの焼き菓子と、岡山県新見市の紅茶農園「アーリーモーニング」さまの紅茶を詰め合わせたスペシャルセットです。私たち学生の中でも、アフタヌーンティー活動、通称「ヌン活」にハマっている人がいて、高校生メンバーも紅茶が好きだったことからこの企画が生まれました。ご自宅でも、晴れの国 岡山の穏やかで温もりのあるティータイムをお気軽に楽しんでいただきたいと思い提案しました。」と話した。続いて「おにのくつした」という靴下を制作「学生スタッフが連携してデザインを手がけさせていただき、倉敷発ブランド「くらしきぬ」さまが丁寧に形にしてくださいました。岡山といえば桃太郎が有名ですが、あえて“鬼”をテーマにしたユニークなデザインが特徴です。足元からしっかり体を温めていただき、これからの季節に、鬼に金棒ですね。」とプレゼン。

最後に「瀬戸内エプソムソルト」を開発した髙橋美羽さんは「こちらも倉敷発のブランド「Tatoubi」さまと共に、お風呂でも岡山への旅の思い出を楽しんでいただけるようにバスグッズを開発しました。いくつかの候補がありましたが、瀬戸内海の夕凪の情景をイメージした優しい香りを学生が選定し、心身をゆるめるリラックスタイムを演出します。」と熱くPRした。

学生たちのプレゼン終了の際、会場はあたたかい拍手に包まれた。上記商品は岡山駅構内のお土産店をはじめ、イオンモール2階のハレマチ特区365で販売される予定。

続けてNTTドコモと学生の取り組みとして「NTTドコモのCMをイメージした映像作品」が3本上映され、NTTドコモ 中国支社長 吉田真也さんより学生たちへのフィードバックが行われた。「まず学生クリエイターの皆様、今回は制作していただきありがとうございました。社内の制作では作れない独自の観点の作品ばかりで、ぜひ実際に放映したいなと思えました。CMはインパクトが大きく、印象に残らないと意味がないので、素晴らしい作品ばかりでした。CMには数々の制約がありますがそれに対応してくれた学生たちの根気を高く評価したいです。地域活性と学生たちの育成、日本のエンタテイメントの未来を無限に広げる本プロジェクトを支援していきます。またミラーライアーフィルムズはLeminoで配信予定です。ぜひ合わせてご覧いただきたいです。」と語り参加した学生への感謝を述べた。

続けて、住友ゴム工業と学生クリエイターとのコラボとして、学生メンバーは住友ゴム工業のご協力のもと、CM制作プロジェクトにも挑戦。テーマは「安全」そして「未来への備え」。2つの商材に対して、それぞれ2案ずつ、計4本のCMを制作し、スクリーンにて上映した。上記4本のCMを受けて住友ゴム工業株式会社 ハイブリッド事業本部 生活インフラビジネスチーム課長 酒井 伸さんより挨拶と映像コンテストの結果発表が行われた。「学生の皆さんにどのようにCMを制作いただけるのか楽しみにしておりました。どれも素晴らしいクオリティで感動しております。」と語り、【MIRAIE】【ハイブリッドターフ】の2部門の授賞式が行われた。受賞した2名の学生の独自の観点やクオリティの高さを評価した。

また地域特別制作作品『喜八』の発表・上映・舞台挨拶が行われ、学生をはじめとしたワークショップの参加者やキャスト、監督がそれぞれの想いを語った。監督の川上誉士幸さんは「十五分で何を語り、演出できるか。2日という撮影期間で、面白いものを作るという目標があった。密室劇にすることで、制作の移動の時間を減らす。会話劇メインで脚本を作った。「12人の怒れる男」などを参考に、物語に派手なアクションはいらない。会話だけで、物語をすすめることができると思えました」と熱弁。主演の木村龍太さんは「今回、メンターの針生さんからオファーをいただきまして参加しました。岡山の学生の皆さんとご一緒できたことで、僕自身も初めて映画作りに参加した時のことを思い出しました。参加した皆さんが、この先映画を作っても作らなくても、この経験が面白かったな、と思ってくれて、人生に何かに繋がっていってくれたらとても嬉しいです。」

学生としてワークショップから参加した大西南帆さんは「私は今回、ワークショップをメインに参加させていただきました。現場では、ひとつのシーンにもたくさんのカットがあることに驚きました。登場人物の気持ちに合わせてカメラ割を変えたり、「蕎麦は長い方がいい」とか、いろんなことを考えるのが本当に楽しかったです。チームで一つの物語を作っていく一体感にもワクワクしました。」と語った。

プレゼン中、登壇者が手にしていたのは最新技術のゴム提灯。参加者全員の名前を記して思い出にも残る形に仕上げており、実際に学生たちも住友ゴム工業の工場に見学に行ったそう。住友ゴムとのコラボレーションを嬉しそうにプレゼンした。

続けて、「喜八」のポスターを制作した森結虎さんは制作を振り返り「プロの方々と取り組むことで技術の高さを実感することができ、とても貴重な経験になりました。また、ポスター制作でも監督の川上さんと試行錯誤することでお互いのデザイン力や作品の趣を感じることができる発想を多く出すことができ、結果的に『喜八』という短編映画に合うビジュアルポスターが制作できたと思っております。」と話した。

またメンターとして映画制作に携わった映画監督の針生悠伺は「自分は『MIRRORLIAR FILMS Season1』で公募作品から選出いただき、そのご縁もあり今回メンターとして関わらせていただきました。そこからの広がりが今回の経験なので、今スクリーンで作品を見て、改めてひとつの映画を創れたことに熱い想いがこみ上げてきます。普段出会えない人たちと作れる、そういった出会いから新しい未来へつなげていただけたと思います。」と本作の完成に喜びを語った。

また長年、岡山県のロケ地誘致などに力をいれている岡山県フィルムコミッション協議会 妹尾真由子さんがサプライズ登壇。「今回松田組、佐渡組の撮影に協力いたしました。改めて、映画の撮影は地元の皆さんや企業の皆さん、今回は学生さんの協力がないと撮れないと思いました。皆さんのお力添えで数々の映画が岡山から発信ができると思っています。」と感謝を述べ、学生たちからは感謝の花束が贈呈された。

最後に「喜八」が3月20日よりLeminoで配信することが明かされ、会場は大きな拍手に包まれた。

本プロジェクトの1年を振り返り、岡山フィルムプロジェクト実行委員長 黒住宗芳の挨拶があり「この1年間、本当にみんなで頑張ってきました。寄付企業の皆さん、学生の皆さんの協力のもとです。プロジェクトは一区切りで終わりではなく、道としてまだまだ続いていきます。来年は『ReTune』も動き出します。みんなで難局を乗り越え、お互いを想いあって乗り越えることが出来ました。この経過にこそ、一番の価値があると思います。これからも経過と結果、両方にコミットしていきたいです。」とプロジェクトを総括し、参加した方々への感謝を述べた。

そして次回『MIRRORLIAR FILMS Season9』の開催地が兵庫県神戸市であると発表された。それに先立ち、神戸市フィルムプロジェクト(仮)実行委員長/川崎青果株式会社 代表取締役社長 川崎 弘真さんが登壇し、「最高のプロジェクトを一ファンとして楽しませていただきました。映画が日本で初めて一般公開されたのは兵庫県神戸市です。そういった土地でミラーライアーフィルムズさんとタッグを組めることを嬉しく思います。」と語り、岡山から兵庫県神戸市へとバトンが渡され、クロージングセレモニーは幕を閉じた。

短編オムニバス映画『MIRRORLIAR FILMS Season8』は来年1月16日(金)より全国公開予定。

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